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naitou

「海に居る星」


言葉がまったく出なくなった時期があった

当時 あまりにもつらい日々を経ていたからだ

私にとって 言葉そして物語は最後の友達のようなものだったから

こうして世界は終わりゆくんだなとぼんやり思った


目に入る耳に入る言葉は すべて ひらいた

ひらかれてゆく意味に対して よろこんだりかなしんだりして

最後の友達へのいつくしみと惜別とを くりかえしていた


もう本も読めなかったし

誰ともくちをきけなかった

メールもネットも 無理だった

みにくい言葉や場面が 激しく次々と とおりすぎていくのを

ひとごとのように ながめては

その痛みにくだけちっていた


 月日は流れ

 景色をこえて

 いつしかいつしか 時は経ち


いくつもいくつも

絵を描いているうちに

ようやく言葉が戻ってきて でも

しばらくそれには気がつかないふりをした

うれしくてこわくて

うれしくてこわくて

すぐにかけよったら また壊れてしまうんじゃないかとさえ思って


今も思う

最後の最後で でてきたものは

きっと強いのだと

誰かに届くことがちゃんとできるのだと

ただそれだけを 今も思う

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