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naitou

「夜の木々の向こう、満月」


朝から町は音楽祭でにぎわっていました。

まだひとかげのまばらな校舎、パイプ椅子を並べてゆく係の人々、チューニングの音、楽器ケースを持って町を歩く制服姿の子たち。


ずいぶん前にひとからいただいたトランペットのミニチュア(15センチもないくらい)を日頃大切にかざっているのだけど、先日

「これって、ベー管?ツェー管?」と訊かれて

「あ、ミニチュアです」と咄嗟にこたえた私は、それってこたえかたとして何があっていて何がまちがっているのかは、もはや謎かもしれません…

…という話を、最近会うことがあった高校吹奏楽部同期や後輩のいくにんかに話すと、それぞれがいろいろ言ったり笑ったりしてくれるから、それはそれで楽しかったです。

どうもありがとう。

短いけど、大切な曲や当時の記憶のいくつかについて書いたものがあって、来年くらいにはかたちにしてお届けできたらいいなと思っています。

全部員に、とまでは言わないけど、同期や同じ時代をすごした前後の期のかたがたに。


放課後はいつも、マウスピースをびーびー鳴らしながら、校舎のどこかに落ち着く練習場所をさがして歩いていた。

みなそれぞれ、窓辺や廊下の行き止まり、慣れた教室などにお気に入りがあって、学校の裏手は大きな川の土手だったので、楽器をさげてよく通っていた時期もあった。

生意気だったな。と、今ではそれらを、とてもかわいらしく思う。

トランペットだったので、野球応援や体育祭のファンファーレなど前に出る機会が多かったからか、「あ、ブラバンの子でしょ?」と校舎や駅できゅうに言われたこともあった。

ずっと、この楽器がほんとうに好きだった。

と同じくらい、どんなにつきつめても、これは私にはかなわないな。とこっそり思っていた。

自分自身で思うような音色が出せていない。という時点で、もう涙が出るほどかなわなかったと思う。


その頃すでに、「いつか、ものを書くひとになりたい」と強く思っていた。

いやもっとおさないこどもの頃、図書館の書架の奥でひとり本をめくり続けた日々から地味につながっていることだったかもしれない。

それはずっと揺らがない私の芯だった。

大切にすこやかにのびやかに育ててゆくべき、みどりの芽かもしれなかった。


満月を見あげながら、黒猫の背をなぜているハローウィン。

たくさんの時代を、ちゃんとつなげてゆけますように、今の私。

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