誰がどう考えてもものすごく理不尽な流れで、ひとにえんえんとどなりちらされる、
という夢を見た。
これは過去に実際にあったことだ。
目が覚めたらかなりぐあいがわるくなっていて、あけがたの台所の窓を開け放って、動悸や吐き気がおさまるまで、つめたい紅茶を飲んでじっとすごしていた。
おとなしめの朝焼けが、しずかにひろがってゆく空。
せっかくととのってきた気持ちがこわされないように、そっと黒猫を抱いて、おでこをくっつけて目を閉じた。
以前は、こういう記憶の夢を見た時、それに強く言い返す自分の声ではっと目が覚めるようなこともたびたびあった。
だいたいが、ひどく苦しく汗をかいていたり涙が出ていたりした。
もう、だいぶ、そんな夢見も減ってきた気がしていたけど、これは一生続くのかなとも思う。
その夢に登場する過去のみにくいモンスターたちを
「赦す」とか「忘れる」とか、もしくはなにか耳ざわりのいい言葉で置き換えることは、
私にはできないし、そうすることはない。
それらについてある程度なにか書いたり触れたりすると、それだけでもう、ペンなり絵筆なり、現在の自分がやっとつかんだツールが穢されてしまうと、きっと思っている。
この浅い呼吸とつらい記憶がおさまって、空が町がもっと明るくなってきたら、
リュックにひとつずつ、今日の持ちものをつめてゆこう。
ハモニカ、スケッチブック、少年詩集、みじかいパステル。
最後に猫に「リュックに、入ってく?」と訊いてみよう。
今日はハロウィンだから、魔除けのランタンも持って行こう。
かぼちゃをくりぬいて、ろうそくをともして。
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