この時間は、登校する朝の小学生たちをネルネルと一緒にながめているのが常です。
元気いっぱいな大声の子、ともだちと仲良くこづきあいながらかけってゆく子、とぼとぼと給食袋を蹴って校舎に向かう子、それらを仕切ってゆくチャイムの響き。
子供の頃、そんな毎日の景色がいつ突然崩壊してしまうのかを、いつもびくびくしていました。
何度かくりかえされた急な転校は、けっこうな負荷だったのだなと、今でも思うことがあります。
それだけに、その頃出会った本たちや吹奏楽という場は、私にとってかけがえのないものでした。
上の絵は、七月堂さんの出張本屋さんのチラシの中面です。
チラシでは絵の上に文字や光を載せていたので、この原画とは少し雰囲気が違いますが、はやい話が「わたくしの思う七月堂」のような世界を描いています。
右上部で、さまざまに光っては降る言葉や文字をあつめている詩人や作家のかたがた、それらを朝顔に投げ込むと、左の朝顔から組んで印刷されたページとなってゆくのをスタッフのみなさまがけんめいに本にして左下の木の洞の本屋さんで販売して、それを楽しみに買って帰る猫の姿。朝顔の灯に照らされて仲良く本を読む猫たち。
こういう優しさの灯る絵を描いてゆきたいなと、最近よく思っています。
あけがた、作業机の上にたたずんだネルネルが何もない空を見つめていたので、一緒にそのあたりを見ていました。
ちょっとネルの視線が動いたら、またそれに添って空を見ていました。
ずいぶんしばらくして、
「誰かいたの?」
とそっと訊くと、黒猫は私の頬にほほをゆっくりとくっつけて
「ううん、何もいなかった」
と言うのでした。
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