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naitou

「『それを運命と受け止められるかな』」


GOMES THE HITMAN「それを運命と受け止められるかな」、この曲をライブで聴いたことは、たぶんないと思う。

でも、いつかは聴けたらいいなと思っている。


昔々、寒いひとりぼっちの仕事場で、よくこの曲をかけていた。

うちあわせとうちあわせの隙間時間に、ノートに何度も歌詞を書きかさねていたこともある。

ものすごく微妙な間合いの気持ちがつづられているこの曲は、現在のライブで演奏するには、おもたく気がすすまないのかもしれないなと勝手に思いながらも、それでもあの時期、この曲に何度もたすけられていたことは私にとって大切な分岐点だった。


当時の私はといえば、すでにけっこうボロボロで、外部から内部からの不協和音にはっきり言ってかなり疲れていた。

本当に絶対に楽しいと思ってここまでずっとやってきて、この劇団を少しでも長くより良く続けられたらいいと思っていて、もちろん応援してくださる方々も数多くいて。

同時に、一身に受けなくてはならなかった内外からの軋轢や、場合によっては理不尽な打撃の数々、私には何を言ってもいいと思っている人々、どんどん疲弊してゆく心身。

現在の私が、あえてなるべく書かないようにしている、本当にあったこわい過去。


そんな時期、この曲を聴くと「あ、こういう思いをしているのは、べつに私だけじゃないんだ、ほかにもたくさんいるよねきっと」とすんなり思えて、いつもちょっと楽になって、すうっと現実にかえってゆくことができた。

きっと、この曲ができるまでの間、いろいろな気持ちや状況が生じていたであろうこのバンドの物語なだけではなくて、ささやかな自分もしくはどこかの誰かのいち風景として、ひろくとらえることができるだけの度量を持った優しい曲なんだと思う。


この歌詞を何度も書きこんだノートは、仕事を全部やめた時に処分した大量の仕事ノートにまぎれてどこかへ行ってしまった。

それでいい、と思う。

今は私は元気でしあわせで、ちゃんと新しい気持ちでまたこの曲を大切に聴いている。

ひっくりかえったごきげんな黒猫が、それを見てる。

新しいノートには、たくさんの猫そして言葉がひろがってゆく。

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