20代なかば頃からずっと大切に聴き続けているバンド、GOMES THE HITMANの山田稔明さんのライブ配信を見ていたら、途中で「25年前、ぼくらの音楽を聴いていた人々はどこへ行っちゃったんだろう」ということを少しお話していた。
今もここで、大切に聴いています。
ものすごくいろいろあったうえで、25年がたって、今もなお。
そんな彼らの新譜『slo-mo replay』は、25年前のアルバムを、現在のメンバーで再録音したセルフカバーだとのこと。
25年前に初めて聴いたまばゆい曲たちを、今の彼らが演奏して、今の私が聴く。
この新CDを手にした夜は、さすがに25年分のいろんなことがよみがえりすぎて、ちょっと涙ぐんだりほほえんだりした。
25年前な。初めての一人暮らしで心細くて、まだ猫も飼っていなくて、バイトと劇団制作の仕事でいつも心も時間もいっぱいだった。
彼らが93年結成で、私の携わっていた劇団が94年旗揚げだったのと、年齢がほぼ同じこともあって、いつのまにか、胸の中で彼らの活動を自分たちになんとなくかさねてみてることも何度かあったと思う。
川沿いのアパートの6畳間で笑いさざめきながら聴き続けた歌の数々。何度引っ越しても持ち歩いていたインディーズ盤のCD。さむいひとりぼっちの仕事場で、遠い稽古場からの帰り道で、楽しいこともかなしいこともあらゆる記憶も、ずっとそばで流れてゆく曲にのせて。
私は今でも、彼らのライブに行く。いや今だからこそ行き続ける。
どうしてもやめてゆかなければならなかった自分たちと、音楽を携えては人前に立ち続けてゆく彼らを、かさねてしまうことはもうほとんどない。
私はすごく普通に、どきどきしてチケットをとって、当日を楽しみにして、ちょっとおしゃれして体調を整えて、ライブハウスに向かう。
長いこと聴きなじんだたくさんの曲と、光の中で演奏している彼らと、笑顔いっぱいのお客さんたち。
もうそれだけで、胸がいっぱいになって、あとはもうただただにこにこしているだけだ。
このアルバムで、彼らの新しい音楽は、私の来し方のあちこちを照らし出す。
でもそれは、ただふりむくだけじゃなくて、なつかしむだけじゃなくて、
もうちょっと先へ、あとほんのちょっとだけ未来へ、
新しい音で、私を誰かを、連れてゆくことができる。
それってとても素敵なことなんじゃないの。
なかなかできることじゃないんじゃないの。
今は私は、元気でしあわせに暮らしている。
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