うすくけむる霧雨の中を、ゆっくりゆっくり歩いて帰ってきた。
思うことがたくさんありすぎて、でも今日はこのまま書けるだけ書いてしまえと思う。
GOMES THE HITMAN 30周年アニバーサリーライブ2「~after the long vacation/出発」の夜。
今日はオールスタンディングで、覚悟して向かって、無事にほどよい位置に立つ。
バンドTシャツを着たたくさんの客席を自分の位置からふりかえれば、まぶしいほどのぎゅうぎゅうの客席と笑顔。
みんな楽しそうに、待っているのが伝わってきて。
1999年のアルバムをもとにしたライブだったので、誰もが「その頃私なにしてたっけな…」と一瞬思ったことかと思う。
99年ね。きっと、早稲田学内を出て下北沢に出て、なんかもう本当にやりたいことやったほうがよくないかって、自分たちで三鷹で『猫演劇フェスティバル』を企画した頃だったと思うよ。
いろんな他劇団の人々とのおつきあいも色とりどりにはじまって、取材とかも増えてきて。
みんな、いつまでも青春の延長戦みたくて、かわゆかったと思うよ。ほんとにね。
まぶしいなつかしい曲たちを聴きながら、今夜はそんな思い出たちもふきとぶくらい楽しくってね。
もちろんねじくれた時期もそれなりにあったかもしれないけど、ちゃんとこうして、楽しい記憶を呼び覚ましてくれるGOMESの楽曲たちは全力で素敵でした。
キーボードの堀越さんの手元が見える位置にいつも席をとることにしていて、今日はかっこよくギターも弾いてらして。
(最近ふと気づいたのだけど、堀越さんの笑顔にどこかなつかしく思うことが多かったのは、私の19歳からの親友で途中まで同じ劇団に在籍していた女優に、外見の感じがかなり似ていてね)。思わずほほえみかけたくなる笑顔とその音が好き。
ベースの須藤さんが、たまににやりとしながら弾いているその安定感を(今日は立って!)ちらちらこっそり見るのがまた楽しかったりして。
ドラムの高橋さんは、いつもきらきらしていて素敵。きっと、いろんなことをこえてらしたんだなと思う。
ふわふわと揺れながら楽しく聴いて楽しくすごして、あっというまに最後の曲。
その最後の曲が『週末の太陽』だとわかった瞬間、いっぺんに急激に、何度もひとりでまたは誰かと行き来した早稲田通りあたりのあの感じを思い出して、一瞬すごく泣いた。
この曲の最初の仮タイトルは「早稲田」だったと、以前何度か山田さんが言っていて、ああじゃあ、それなりに同時期のあのへんの記憶をかさねていいんだなってちょっと思ったことがあったから。
「恋する惑星」のサントラCDを聴きながら、もうちょっとがんばれるかないやがんばらねばなどと思いながら、早稲田通りを馬場までがしがし歩いた日のこと。
初めて稽古場に行った時(まだ2回目公演の準備中の頃だったと思う)、空白の時間が多いことに耐えかねて「私ちょっと、むこうの古本街のほうまで出てくるんでー」と第二学生会館を出て「…あれで大丈夫なんか。…どうなのか」と、空をあおいだこと。
帰ってきたら「今夜はブギーバック」が流れてたこと。
公演終わりで疲れ切った深夜、高田馬場の打ち上げ会場の居酒屋「海乃家」にみんなで向かう大荷物の一行。
途中の鳩屋敷。たくさんのラーメン屋や居酒屋。
みんな、今はもうないものばかりだ。
そしてそれをもう泣くこともない。
過去も現在も未来も、ちゃんと素敵にまざって、たんたんと空へとたちのぼってゆく。
山田さんののびやかな優しい歌声、そしてその力強さに、たくさんの人々がたくさんの大切な景色を灯して、今日も歩いてゆく。
そんな日向を、しずかに見たように思う、強い夜でした。
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